北海道の課題に対する具体的政策

北海道が抱える問題点と解決策について

札幌市または北海道が直面している問題としては,(1)人口減,特に若者人口の減少,(2)就労機会が少ないまたは減少,(3)福祉制度の脆弱性,特に子育 て世代に対する福祉の脆弱性,(4)インフラ基盤の脆弱性,(5)教育・学術基 盤の脆弱性,(6)消費活動の低迷などが挙げられます。

これらの問題点を俯瞰してみると,全て「経済の脆弱性」という問題点に辿り着くことがわかります。したがって,北海道再生のためにまず何よりも優先すべき課題は「経済基盤の向上」であると考えます。
経済よりも優先すべきは人々の生活に直結している福祉や医療ではないかという意見もあるでしょうが,それはあくまで東京など経済が上手く回っているところのことだと考えます。
北海道はそうはいきません。まずお金がない。インフラも整備されていない。そうすると福祉や教育も不十分なままです。その結果,企業や人も集まらなくなり,ますます経済が悪くなり,福祉や教育も十分に提供できないという負のスパイラル現象が起こっているのが現状です。経済がしっかりしていないと,どのような政策も実現不可能ということです。

そして,北海道の経済を向上させる4つの鍵として,1)インフラの整備,2)農林水産業の振興,3)観光業の振興,4)本社の誘致があると考えます。

 高速道路や航空インフラを整備することにより,広大な北海道各地域間の流通や人の移動が活発になり,かつ本州・九州や外国との経済交流も活性化することが出来ます。例えば,丘珠空港の延伸とアクセス向上だけでも経済的効果は大きいと考えます。
丘珠空港の延伸とアクセス向上だけでも経済的効果は大きいと考えます。例えば,福岡空港は博多駅(北海道の札幌駅に相当)から地下鉄で5分で行けますが,札幌では新千歳空港まで50分ほどかかる状況です。
都市高速道路についても,札幌圏では事実上ありませんが,福岡都市圏では56.2km,名古屋圏では81.2kmとなっています。しばしば比較される福岡では,九州縦貫道路(道央道に相当)から直接都市高速に接続し,福岡空港や天神,博多駅にとどまらず住宅街へもアクセスが可能となっているなど,都心までスムーズに到達することが可能となっています。
また,新幹線についても,可能であれば札幌で止めることなく,旭川及び新千歳空港から苫小牧まで延伸することで,北海道の札幌以外の地域の発展に寄与できると考えます。

 北海道の主要産業はもちろん農林水産業ですが,これを単に作って売るだけではなく,ブランド化や品質向上,さらに加工品とすることで付加価値を高め,国内だけではなく海外へも積極的に輸出することにより農林水産業の収入を上げ,結果として農林水産地域の過疎化を防ぐことが出来ます。

また,観光業の振興は言うまでもありません。新型コロナウイルス感染症の影響でインバウンドが滞っていますが,観光業が北海道の主要産業となることは明らかであり,宿泊施設や外国人対応インフラの整備などを積極的に進める必要があります。

そして,本社の誘致です。とかく北海道とライバル視される福岡県ですが,福 岡県には TOTO を始め東証一部上場企業が24社存在しますが,北海道には11社しか存在しません。三大都市と言われる愛知県には90社,大阪府には224社存在します。本社の誘致はそのまま税収と雇用に直結します。私見ですが,サッポロビールの本社を東京の恵比寿から札幌に誘致することが出来れば大きなマイルストーンになると考えます。このように北海道は,経済を活性化することにより,多くの諸問題を解決出来ると考えます。

参考:丘珠空港の利活用に関する検討会議報告書(平成30年2月北海道総合政策部・札幌市まちづくり政策局)https://www.city.sapporo.jp/shimin/okadama/torikumi/kentokaigi/documents/houkokusho.pdf

新型コロナウイルス感染症対策について

 新型コロナウイルス感染症の克服が,現在最も重要な課題であることは間違いありません。

まずは感染拡大をいかにして防ぐかが最優先であり,そのためにはワクチンの接種を出来る限り速やかに全国民の実施することが不可欠であることは言うまでもありません。今年は東京オリンピックも予定されており,仮に実施するのであれば,海外からも多くの人々が訪れることになります。そのため,国内に居住する人だけでなく,我が国を訪問する人が感染しないためにも,まずはワクチンの早期接種を最優先にするべきです。

さらに,感染拡大防止のためには,ワクチンの接種に加えて大人数での飲み会や接待を伴う飲食の自粛,移動の自粛も求められており,昨年から東京などの一部地域において緊急事態宣言が発動され,飲食店の営業時間が短縮されるなどしています。しかし,この措置は飲食業界・旅行業界への経済的ダメージは測り知れないものがあります。特にGotoトラベルが全国的に停止となったため,地方への旅行者が急激に減少しており,地方の経済が疲弊しきっているのが現状です。

新型コロナウイルス感染症の蔓延はいずれ解消するものです。しかし,一度破産などで営業が止まってしまうと再開は難しく,再開のためにさらに大きな費用を要します。

したがって,地域のキーとなる会社や産業は出来る限り公的資金を用いて現状を乗り切らせることを優先させるべきと考えます。当然のことながら,クラスターや感染拡大を防ぐための医療現場への人の配置や財政支出を躊躇する必要は無いと考えます。

ポイントは「予防よりも再生する方が大きな費用を要する」ということを常に意識することだと思います。新型コロナウイルス対策もワクチンの早期接種により,そもそも新型コロナウイルスに感染しないような社会にするべきですし,経済も困窮している中小企業などが破綻しないような政策をとるべきです。一方で,新型コロナウイルス感染症の拡大により,新しい産業や既存の産業でも好調になった分野があるのも事実です。通販やふるさと納税を通じた販売も好調です。このようなネットを通じた販売業を促進する政策を積極的に取り入れる必要もあると考えます。

福祉について

 我が国における少子化及び北海道においては過疎化が加速的に進行している状況において,高齢者に対する介護や福祉は深刻な問題です。若い世代が減っている状況では労働力が減少し,同時に税収も減少します。

一方で,いわゆる団塊の世代が介護される世代になりつつあり,介護される側の人口が支える側よりも圧倒的に多いのが現状です。すなわち,高齢者の介護を従来のように親族の若い世代に頼ることが出来ないということが最も大きな問題である考えます。このような状況において,根本的な解決方策は少子化の傾向をストップさせ地方の人口を増やし過疎を防ぐことにありますが,この2つは仮に有効な手段があったとしても時間がかかります。

したがって,まず求められるのは,親族に代わって介護をしてくれる職業的な介護施設及び医療施設を地方で充実させることだと考えます。もちろん,これらは主として民間企業が担うものですから,利益が出ないような地域に進出することは期待できません。そこで,国または地方公共団体で,当該施設・病院までの交通機関の整備や交通費を補助するといったアクセスを改善させること及び施設を運営する企業や施設で働く人たちへ直接補助金を支給したり,医療関係者に対しても有利な補助金などを交付するということも検討する必要があると考えます。大切なことは「利益が出ないから撤退する」という事態にならないようにすることだと考えます。

次に,インターネットは,既に電気,水道,道路のように社会的なインフラとなっており,インターネットを利用したサービスを高齢者も自由かつストレスなく使えるようにする必要があると考えます。

高齢者であっても誰もがスマートフォンやタブレット,パソコンをあたかもテレビやラジオ,洗濯機のようにストレスなく使えるように国や自治体が積極的に支援する必要があると考えます。

スマートフォンやパソコンなどが自由に使えるようになれば,簡単な診療,買い物,友達とのコミュニケーション,子供や孫との交流,安全管理もリモートで可能となります。今後は独居の高齢者が増えることが予想されており,特に札幌市でも80代以上の高齢者では女性の独居世帯が増えているところ,外出をすることなく診察や買い物が出来るようになれば,大雪や災害時でも健康で安心な生活を維持することが可能となります。

このように,現状を把握して今の時代に対応した新しい福祉政策が早急に求められます。

教育について

北海道で求められているのは大学教育の充実だと考えます。九州と比較すると,九州内の国公立大学数は26(そのうち総合大学は8校)であるのに対し,北海道内は国公立大学17(そのうち総合大学は1校,ただし教育大学の道内5キャンパス含む。)であり,特に総合大学の選択肢がかなり少ない状況です。
したがって,高等学校までの教育において,いわゆる進学校に入っても,将来的に活躍が期待される優秀な若者がどんどん首都圏や関西圏などの道外の大学に行ってしまい,北海道に戻ってこなくなるという傾向にあります。

就職先についても同様です。北海道内の平均給与が東京や大阪よりも下回っているため,大学又は高校を卒業した多くの若者が本州に就職先を求める傾向があります。特に,東証一部上場企業を比較すると,東京はもちろん最も多いのですが,北海道が11なのに対して,福岡県が24,愛知県が90,大阪府が224と東京以外の中核都市と比較しても少ないのが現状です。そうなると,道内・道外にかかわらず大学を卒業した学生が北海道外に就職先として目を向けてしまうという現状は避けられません。

このような現状を打開するためには,大学,特に総合大学の誘致や優秀は教授陣を招聘するなど大学の質的量的充実を積極的に行うとともに,経済的な困窮により高等教育が受けることができない若者に対しては,奨学金や授業料に対する補助など,積極的な財政支援を行う必要があると考えます。
北海道をはじめとする地方都市においては,若者をいかに定住させるか,これが地域振興の鍵になると考えます。

現在の経済問題に対する対応

 現在の世界的な不景気に対する効果的な対策は,簡単にいかないことは事実です。しかしながら,地方・地域に着目した場合,最も切実に望まれていることは「雇用の確保」であると断言できます。

 例えば,先述の北海道を例にあげると,北海道の地元に魅力的な就職先がないばかりに,優秀な人材が東京・大阪などの本州の都会に流れていっているのが実情です。魅力的な就職先がないばかりに,人口が減少し,消費も減衰し,経済が停滞し,これでは,経済を活性化できないばかりか,いつまでたっても地方の自立も達成できません。

では,魅力的な雇用先を創出するためにはどうしたらよいのでしょうか。その答えの一つに,先述のとおり本社の誘致もありますし,地域に根差した企業を育成することも必要です。さらに,後述の通り地方分権があると考えますし,地方への投資を活性化させるために,世界各国からの企業誘致のための思い切った優遇措置,そしてインフラの整備が不可欠であると考えます。換言するならば,中央主体の景気対策ではなく,地方から底上げできる景気対策が必要であると考えます。

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